お子様の眼科診療について
生まれてすぐの赤ちゃんは、ぼんやりと明かり分かる程度の視力と言われています。生後1歳ごろまでは、目の前にある物体を見て把握する機能が発達し、6~7歳ごろになると視力が完成するといわれています。視機能は生後から急速に発達します。幼児期の斜視や弱視は、視機能が発達する時期に治療を行うことで完治する可能性があります。このように、お子様の眼科診療において重要なのは、早期発見と早期治療です。視力の発達する期間に、適切な治療を行わなければ、視機能がしっかりと発達しない恐れがあります。また、乳児や幼児の目の障害は外からは分かりにくく、何らかの違和感があっても上手に伝えることができないため、なかなか異常に気付くことが難しいとされています。3歳児検診を受ける、気づいた場合は速やかに眼科を受診することが重要です。当院では大学病院と連携し、斜視・弱視の専門外来も行っております。お子様の目の異常が気になった際は、当院にご相談ください。
子供の代表的な目の病気
子供の目の病気は多く見られます。その理由は、免疫系が未熟であり感染症などが重症化しやすいことが挙げられます。また、子供は保育園や学校などで多くの人と接触するため感染リスクが高まります。子供の目の病気は体調と同じように急変することが多くあります。気づいた時には、早めに医療機関を受診することが大切です。
結膜炎(けつまくえん)
子供の目が赤くなって目やにが出ている症状は、結膜が充血して炎症を起こしている「結膜炎」と言う病気です。主な症状としては、目が痛い・充血している・目やにがたくさん出る・目がかゆい・ゴロゴロするなどが現れます。結膜炎の原因は大きく分けて、ウイルス性結膜炎、細菌性結膜炎、アレルギー性結膜炎(花粉症)の3つが挙げられます。ウイルス性結膜炎は感染力が非常に高く、人に移る可能性があります。細菌性結膜炎は感染力が低いですが人に移る場合もあります。アレルギー性結膜炎は、春や秋など花粉によって出現します。治療方法は、点眼治療を主に行います。
ものもらい
目のまぶたが腫れている、痒い、痛い、目が開けづらい、ゴロゴロするなどの症状は、「ものもらい」という病気です。関西の方では「めいぼ」「めばちこ」などとも呼ばれます。眼科では、「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」という呼びます。「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)は、強いかゆみや痛み、大きく赤く腫れます。黄色ブドウ球菌という細菌が原因で、涙線やまつ毛の毛根などで急激に発生し炎症を起こします。主なまつ毛の内側にできることもあり、目がゴロゴロするといった違和感があることもあります。子どもの年齢が低いときは、汚い手で目をかいたり、こすることがものもらいの原因となる可能性も多いため、ママやパパが手洗いの声かけをしたり、タオルやハンカチは清潔なものを持たせるなど意識することが大切です。「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」はしこりのことで、痛みや赤みはなく、小さくならない腫れが主な症状です。ものもらい自体は人に感染する心配はありません。それぞれの種類により治療は異なります。状態によっては抗生物質や点眼薬、悪化すると切開などの処置が必要となる場合もありますので早めの治療をおすすめしています。
打撲(だぼく)
子供が目をぶつけた時は、応急処置として、まぶたや目の周囲が腫れていれば、その個所を冷やし、ゴミ等が付着していれば優しく洗い流してください。圧迫するのは眼球に余計な圧がかかり、かえって症状を悪化させる可能性があるため控えて様子をみるようにしてください。いつまでたっても泣き止まない、目を開けることができない、目の中から出血している状態であれば、黒目や角膜が傷ついている可能性があります。また、左右の目で追視をすることができない・瞬きができない・腫れがひどい状態であれば、すぐに救急外来を受診するようにしてください。子供の打撲は、「軽度かな?」という場合でも、目の周囲の骨が折れていたり、眼球自体が傷ついていることがあります。専門医に診てもらい「大丈夫」の一言があれば何より安心できるため受診をおすすめしています。
斜視(しゃし)
物を見ようとした際、通常ならば両目が目標物に向かって同じ方向を向きますが、斜視の場合は、目標に向かって両眼を合わせることができません。斜視は子供の2%にみられる病気で、黒目がずれる方向によって、内斜視・外斜視・上斜視・下斜視の4種類があります。
斜視の主な原因は、「目の筋肉や神経などの異常」「遠視」「両眼視の異常」「視力不良」などがあります。目を動かす筋肉や神経の異常や、脳の異常が原因で両目が一緒に正しくものを見ることができない場合は、視力の程度と複視(物が二重に見える)の有無などを検査し、生活に影響がある場合は手術を行うことがあります。「遠視」が原因の場合は、治療用眼鏡の装用によって症状を改善できる可能性があります。お子さんの斜視の原因によって、治療が異なるため、目の位置の異常を気づいた段階で眼科を受診することをおすすめしています。
弱視(じゃくし)
生後間もない赤ちゃんの視力は、物をはっきりと見ることができません。そこから、外部の視覚的刺激によって視力が発達し、次第にはっきりと見えるようになって識別するようになります。この視機能の発達段階で、視覚的刺激が正常に伝わらず発達できない「発達不全」の状態を弱視と言います。特徴は、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても視力が上がらないこととされています。原因としては、斜視・遠視・近視・乱視などの屈折異常と先天性の眼科疾患などがあります。裸眼での視力が1.0ない場合でも、眼鏡やコンタクトレンズの装用で1.0以上の視力があれば弱視ではありません。弱視の治療が有効なのは、視覚の感受性期間とするため、3歳児検診などで異常が見つかった場合は治療を行います。治療方法は、アイパッチ・弱視治療用眼鏡などを用いて行いますが、お子さんの見え方や性格などでも異なります。経験豊富な視能訓練士が在籍しており、自宅でも訓練できるようにサポートしています。また、大学病院との連携も行っていますのでお気軽にご相談ください。
色覚異常(しきかくいじょう)
色の見え方が大多数の人と違っている状態を色覚異常と言います。色の感じ方は、網膜の細胞によって決まりますが、先天性の異常によって起こることがほとんどです。自覚症状に乏しく、全く色が分からないというように誤解を受けやすいですが、色の感じ方が異なるだけで色が全く分からないということではありません。色覚異常を判断する検査があるので、お子さんの色の見え方で気になる場合は眼科にご相談ください。色覚異常が認められた場合は、日常生活を支障なく過ごすための工夫やアドバイスを行います。
子供の近視について
「近視」とは、眼に入ってきた平行光線が、網膜より前で焦点を結んでいる状態のことです。そのため近くのものははっきりと見える一方、遠くのものはぼやけて見えます。眼球の長さである「眼軸」の長さが正常よりも長い、または水晶体や角膜の屈折力が強いことが原因と考えられます。逆に「遠視」は、眼に入ってきた平行光線が、網膜より後ろで焦点を結んでいる状態のことです。「遠視は遠くがよく見える」と思っている方も多いようですが、実際は遠くのものも近くのものも見えづらく、常に調節が必要なため疲れやすいといわれています。眼軸の長さが正常よりも短い、または水晶体や角膜の屈折力が弱いために起こると考えられます。近視は凹レンズ、遠視は凸レンズのメガネやコンタクトレンズを使い矯正します。
近視の原因
近視の人は正常な人より目の長さ(眼軸長)が長いため、ピントが合わず遠くがぼやけて見えづらくなります。近視には大きく分けて「環境要因」と「遺伝子要因」があり、近視の多くは学童期に発症し平均20歳くらいまで進行します。環境因子としてはパソコンやスマートフォンなどで目を使いすぎることや、外で遊ばなくなったことなどが言われています。強い近視(強度近視)には遺伝的な影響が大きいと知られており、親が強度近視の場合、子供が早くから強い近視を生じることが報告されています。近視が強くなると緑内障や網膜剥離、黄斑変性症などの重篤な病気を引き起こす原因となるため、近視抑制治療が有効的です。
近視の予防
教室の一番前でも0.3を切ると眼鏡が必要となります。学業に支障が出る場合がありますので、0.5~0.7程度を基準に眼鏡の装用を考えましょう。眼鏡を弱めにしても近視の進行を抑制することはできません。眼鏡の付け外しで近視が進むこともありません。
近視の抑制方法
日中1日2時間の屋外活動が有効といわれています。太陽光の一部であるバイオレット光は、近視抑制遺伝子EGR1を活性化。1日2時間の屋外活動で、近視になる割合を60~20%まで減らせます。ゲームや読書などの近方作業の悪影響も減らせます。窓ガラスや眼鏡はバイオレット光を遮断するため、可能であれば眼鏡は授業中だけ、屋外は裸眼で過ごすことがおすすめです。
近視遺伝子検査キット
近視にかかわる様々な遺伝子を解析して、遺伝的に近視になる可能性の高さ(リスク)をお知らせしています。年齢制限はなく、キット内の綿棒で頬の内側を擦り、口腔粘膜を採取する方法で簡単に検査を受けることができます。同意書等と共に郵送すると、約1ヶ月程度でご自宅に判定結果が届きます。本遺伝子検査は、遺伝的な体質を判定する消費者向け遺伝子検査で診断用ではありません。未成年の方の実施には保護者の同意が必要となります。ご両親のどちらかが近視の方、遺伝的な近視のリスクを知りたい方は診察時にお申しつけください。*自由診療 13,000円(税込)です。
子供の近視の進行を抑制する治療
様々な近視の進行予防方法がありますが明確なエビデンスやコンセンサスが得られていない治療法が多くあります。当院では有効性・安全性が示されている、リジュセア®ミニ点眼液0.025%、レッドライト治療、オルソケラトロジー治療を行っています。
リジュセアミニ点眼液0.025%
小児期の近視の進行を抑制させることを目的に「低濃度アトロピン0.025%を配合させた点眼薬」を一日1滴点眼する治療のことです。近視の進行を軽減させるといわれています。近視予防は世界的に最も広く行われている治療です。現在も日本や海外で研究が進められています。
2025年4月21日に、参天製薬とシンガポールの国立眼科・視覚研究所であるシンガポールアイリサーチインスティチュート(SERI)が共同開発した、「リジュセア®ミニ点眼液0.025%」が発売されました。「リジュセア®ミニ点眼液0.025%」は、アトロピンを0.025%含有した点眼薬で、3年間の治験では、約3割ほど近視進行を軽減させるという報告がされています。これまでのマイオピン点眼薬0.025%とリジュセア®ミニ点眼液0.025%との違いは、国内で承認された防腐剤を含まない一回使い切りタイプである点です。リジュセア®ミニ点眼液0.025%は、1回1滴 、1日1回就寝前に点眼します。主に対象となるお子様は、視力検査ができる5歳~18歳くらい、軽度または中等度-6Dの近視の方、定期的な通院が可能な方としています。年齢にもよりますが2年以上継続することをおすすめします。2024年12月27日に厚生労働省から承認された点眼薬ですが、薬価基準未収載医薬品のため、保険適応ではなく自費診療としての処方となります。健康保険や医療費助成制度も給付対象外となります。初回診療は保険診療です。初回処方は、1箱30本(30日分)4,380円(税込)になります。当院では、3か月毎の定期健診(2000円/回)時に視力検査と1年毎に眼の長さを測定することで、近視の進行度を評価しています。
レッドライト治療
「Eyerising」という機器を使い、650nmの低出力の赤色光を自宅で1日2回、1回3分間、週5回(1週間あたり10回)照射することで、近視の進行を抑制する治療法です。この治療は、眼底の血流を促進し、眼軸長の伸びを緩やかにすることで、近視の進行を最大87.7%抑制する効果が報告されています。この治療で用いられる赤色光は、可視光で安全性が高く副作用の報告は現時点ではありません。日本では未承認の医療機器であるため、保険適応外です。日本では、東京医科歯科大学病院が臨床研修を行っています。低濃度アトロピン点眼治療との併用はできません。当院でレッドライトの体験とご案内が可能です。お気軽にご相談ください。
オルソケラトロジー治療
オルソケラトロジーレンズ(ナイトレンズ)というハードコンタクトレンズを就寝前に装用することで、寝ている間に近視を矯正できる治療方法です。起床したら、コンタクトレンズを外して、昼間は裸眼で生活しても良好な視界で快適に過ごせます。オルソケラトロジーレンズの近視抑制効果が近年注目を集め、特に近視が進んだ5歳~12歳の小学校に通う時期(学童期)のお子さんに有効だとされています。